「交流分析」とはどのような事を可能にする心理学なのか。勉強するとどう役に立つのでしょうか。
交流分析の理論と技法を日常の診療・治療に実際に役立てて効果を上げておられる中部労災病院心療内科の芦原睦先生に、連載の第4回目として、交流分析理論の内の「基本的対人関係の構え」についてお書きいただきました。
基本的対人関係の構えと
「なくて七癖、七つの生き癖」
エゴグラムのパターンは、その人の生き方の癖のようなものです。そこで私は七つの代表的なエゴグラム・パターンを「なくて七癖、七つの生き癖」と呼んでみました。
1.対人関係における基本的な構え
エゴグラム・パターンによりその人の対人関係における基本的な構え(態度)が理解できると言われています。代表的なパターンは図1〜7に示した七つのパターンのうち以下の4つです。
1)円満パターン(アベレージ)
2)献身パターン(ナイチンゲール)
3)自己主張パターン(ドナルドダック)
4)葛藤パターン(ハムレット)
これらの基本的4パターンの対人関係は以下の傾向があると言われています。
1)私はOK,他人もOK
私にもまわりの人にも皆,いいところがある
2)私はOKでないが、他人はOK
まわりの人に比べて私はダメだ
3)私はOKだが、他人はOKでない
私はいつも正しいのだ
4)私もOKでないが、他人もOKでない
私もダメだし、世の中も間違っている
2.七つの生き癖
代表的な七つのエゴグラム・パターン
先に述べた4パターンによくみられるW型、M型、右下がり型を加えたのが『七つの生き癖』(図1〜7)です。
1)へ型・・・円満パターン(アベレージ)
NPを頂点とする『へ』型のエゴグラムを呈し、一般に対人関係におけるトラブルが少なく自他共に肯定的な人と言われています。このパターンは“和”を重んじる日本人の平均パターンとも言われています。自分を変えたいと思っている人はこの型を目指します。
2)N型・・・献身パターン(ナイチンゲール)
NPを頂点としFCを底とする『N』型は自己否定的で他人に依存的です。この型の人はNPが高く、他者に対する配慮や温みはありますが、ACが高いので言いたいことが言えず、心の内にためやすいのが特徴です。気分転換も苦手で、嫌な感情を後々までひきずり、自律神経失調症などのストレス病になりやすい人と言えます。
3)逆N型・・・自己主張パターン(ドナルドダック)
CP,FCが高く、NP,ACが低い『逆N』型は、自己中心的な人で自己主張タイプです。要するに責任の所在は他人にあり、自分は常に正しいという内省の乏しい人でしょう。しかしこのパターンの人の持つ野望や欲望が、芸術や芸能方面に向いた時、力を発揮します。良く言えば、芸術家肌ということです。
4)V型・・・葛藤パターン(ハムレット)
両端のCP,ACが高く全体が『V』型になるエゴグラムです。CPが高いので、“こうあるべきだ” “〜せねばならない”と自分や他人に完全さを要求しますが、反面ACが高いのでそれを口に出して言えず、遠慮がちになります。そのためにいつも心の中で葛藤を繰り返し、悩み多き人となるのです。つまり責任感や使命感に縛られている厳しい自分と、他人からの評価を気にする控え目な自分が絶えず葛藤を繰り返しているのが特徴です。
5)W型・・・苦悩パターン(ウェルテル)
先のV型の亜形で、両端のCP、ACの高さに加え、Aも高い点が特徴です。
CP,ACの葛藤状況はV型と同じですが、Aが高く、現実を吟味したり、分析しようとする分、その悩みは深刻です。ストレス潰瘍やうつ状態になりやすいと言われています。
6)M型・・・明朗パターン(アイドル)
NP、FCの両者が高く、他はそれよりも低いことが特徴です。このパターンは明るく朗らかな若い女性によく見られます。他人に対する思いやりがあり、好奇心旺盛で楽しいことが大好きな人間と言えます。会社の宴会係と呼ばれるような明るく楽しい人です。
7)右下がり型・・・頑固パターン(ボス)
CPを頂点にして右へ下がっている『右下がり型』の特徴は、何と言っても頑固な事です。ACが一番低く、他の人の意見には、耳を貸しません。他人のすることにカッカとくることが多く、「頭痛」や「高血圧」になりやすいと言われています。
第1回-1:交流分析って何?
第1回-2:交流分析(TA)の哲学
第2回-1:3つの欲求理論と4つの分析理論
第2回-2:ストローク
第2回-3:時間の構造化
第3回-1:構造分析
第3回-2:自己成長エゴグラム
第4回:基本的対人関係の構え
第5回-1:交流パターン(やりとり)・ゲーム分析
第5回-2:脚本分析
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