心理学がブームのような今、自分をしっかり持って望まないと、ちょっとあぶない物もあるようです。女性週刊誌などにもいろいろと特集があるようですが、どれを信じて勉強すれば良いのかさえもわからなくなりそうな状況です。あなたは大丈夫ですか。
さて、そのような状況の中で、「交流分析」は安心して使える技法の一つだと思います。
「交流分析」とはどのような事を可能にする心理学なのか。勉強するとどう役立つのか。
心療内科で日々診療に応用されていらっしゃる芦原睦先生に5回に渡って連載して戴くことになりました。
今回は、その第1回目として、交流分析の基本的な考え方についてお書きいただきました。初心の方だけでなく、少し勉強された方も復習の意味でぜひお読み下さい。
1.TAの基本的考え方(その哲学)
哲学という言葉が難しい印象を与えますので、ここでは基本的考え方という言葉を使います。まず、TAでは『今ここ(here
and now )』という大原則があります。人は誰でも「今ここ」に生き、存在しているのであり、「過去のどこか」に居るのではないということです。よって「今ここ」を大切にする視点から「過去と他人は変えられない。変えうるのは現在の自分だけである。」と結論づけています。
私たちは、「自分がもっとお金持ちの家に生まれたら良かったのに。」や「あの時、自分はこうするべきであった。」などと、済んでしまった出来事やどうにもならない自らの過去にいつまでも拘泥することがあります。 また「母親がこういう人だったら、自分はもっと幸せだったのに。」や「職場の上司があんな人でなければいい。」などと、他人が変わってくれることを期待することもあります。
しかしTAの『今ここ(here and now )』に生きるという大原則は、両者の考え方が創造的・生産的でないことを教えてくれます。
またTAには、
・人は誰でもかけがえのない貴重な存在である(OKである)
・人は誰でも考える能力をもつ
・人は自分の運命を自分で決定し、その決定は変えることができる
などの基本的考え方もあります。いってみれば、TAは性善説に立脚し、他のカウンセリング理論同様、自律性を目標としていると言えましょう。
「過去と他人は変えられない。変えうるのは自分だけである。」
本当に素晴らしい考え方であると思います。しかし、現実的にはなかなか難しいことですね。ですから、私も、心療内科という医療の現場でTAを使うのみならず、私自身の人生のためにTAの勉強を一生涯続けて行こうと思っています。
今回の参考文献
「自分がわかる心理テスト」
桂戴作監修、芦原睦著
講談社ブルーバックス
東京 (1992)
第1回-1:交流分析って何?
第1回-2:交流分析(TA)の哲学
第2回-1:3つの欲求理論と4つの分析理論
第2回-2:ストローク
第2回-3:時間の構造化
第3回-1:構造分析
第3回-2:自己成長エゴグラム
第4回:基本的対人関係の構え
第5回-1:交流パターン(やりとり)・ゲーム分析
第5回-2:脚本分析
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