「交流分析」とはどのような事を可能にする心理学なのか。勉強するとどう役に立つのでしょうか。
交流分析の理論と技法を日常の診療・治療に実際に役立てて効果を上げておられる中部労災病院心療内科の芦原睦先生に、連載の第3回目として、交流分析理論の内の「構造分析」「自己成長エゴグラム」についてお書きいただきました。
構造分析
1.心の中の五人家族
今回は4つの分析の基本、構造分析です。
TAでは人は誰も自分の中に“三つの私”を持っているとしています。
下図の三つの円は上段より
・“親の自我状態:Parent『P』”
・“大人の自我状態:Adult『A』”
・“子供の自我状態:Child『C』”
を現しています。
『P』『A』『C』は精神分析の“超自我”“自我”“イド(エス)”に相当すると言われていますが、自我状態という用語がわかりにくければ、心の状態や行動パターンと考えて差し支えないでしょう。
『P』とは親の影響をそのまま取り入れた親のような心であり、
父親的で批判的な親の自我状態(Critical Parent :CP)と
母親的で養護的な親の自我状態(Nurturing Parent:NP)に分けられ,
『A』は成人としての客観的な心で現実の認識、物事の判断を行います。
『C』は子供心そのもので、
本能的な自由奔放な子供の自我状態(Free Child:FC)と
親の顔色を見るような順応した子供の自我状態(Adapted Child :AC)
に分けられます。
CP,NP,A,FC,ACの五つの自我状態を、私は“心の中の五人家族”と呼んでいます。イメージを漫画で示しましたが、
CP・・怒りっぽいガンコオヤジ
NP・・お世話好きオバチャン
A・・・クールで合理的なオニイサン
FC・・いつも明るいヤンチャ坊主
AC・・言いたいことが言えないイイ子ブリッ子
この「心の中の五人家族」は、誰の心の中にも居て、様々な状況に応じて様々な対応をします。また各々は長所と短所を持っています。
例えばCPの高い人は規則や規律を重んじ、理想や目標に向かって進むという長所を持っていますが、自分にも他人にも厳しすぎて、人に対して支配的、威圧的になりやすい傾向を持つというようにです。このような“心の中の五人家族”即ち心の中の五つの状態を質問にしてグラフにしたものが「エゴグラム」です。
第1回-1:交流分析って何?
第1回-2:交流分析(TA)の哲学
第2回-1:3つの欲求理論と4つの分析理論
第2回-2:ストローク
第2回-3:時間の構造化
第3回-1:構造分析
第3回-2:自己成長エゴグラム
第4回:基本的対人関係の構え
第5回-1:交流パターン(やりとり)・ゲーム分析
第5回-2:脚本分析
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