ラケット

 

 ラケットとは、個人が、自分でも意識しないまま周囲を操作して、自分の脚本を押し進めるお膳立てをすることを意味します。

 ラケットには、ふつうラケット感情が伴います。

 ラケット感情というのは、幼い時に、親の愛情を得る手段として形成された一種の感情の条件反射です。そして、その後の人生においても持続するもので、精神分析的に言えば「幼時に身につけた本能的感情的生活の歪み」ということになります。



 ラケット感情の性質をまとめると、

1. 人がゲームを演じるとき、その結末として、きまって味わう不快感情

2. 幼時に学習され奨励されたもので、成人の問題解決の手段としては不適切な感情

3. 自然な感情をカムフラージュして作られた人工的な感情

4. それに耽溺していると、愛情や承認(ストローク)が必ず到来するという空想に基づいている

5. 他人を変えようという企みが隠されている

6. この感情に支配されると、人は現時点に不釣り合いな感情反応を示す

7. 少しずつ積み立てられたり、その奥にひそむ真の感情が未処理なままに放置されると、次のトラブルへの準備をうながす→結末感情(心理ゲームの終わりに味わう、もやもやした不快感情。憂うつ、怒り、悲しみ、恐怖、罪悪感、後悔などが代表的な感情である)



 TAでは、長年、ラケットとラケット感情が明確に区別されずに使われていましたが、最近では両者は区別されるようになりました。

 ラケット感情は慢性で定型化された不快感情(いやな感じ)であり、
 ラケットは、自分でお膳立てしてその感情を味わう過程という意味です。

 なお、ラケット・システムは“感情、思考、行動を含む(心身相関の)歪んだシステムで、個人が脚本を維持するために自ら強化しているもの”と定義されます。

 方法としては、脚本信条、幼時決断とラケット感情、ラケットの表出としての症状行動、空想生活、感情記憶などの心的要素が相互に作用しながら、脚本促進の目標のためにともに働いていることを理解します。

 また、上記のそれぞれの部分の間で情報の収集、伝達、交換を行うことで、自分の脚本をまとまりを持った全体の中で把握する、といった作業が中心となります。







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